県名と県庁所在地が違う県はなぜ生まれた?歴史の真相と全一覧・覚え方
小学校の社会科の授業や中学受験対策で、誰もが一度は「なぜ県名と県庁所在地の名前が一致しない県があるのか」と疑問を抱いた経験があるはずです。「愛知県なのに名古屋市」「神奈川県なのに横浜市」といったズレは、暗記を強いられる子どもたちにとっては理不尽なハードルに映り、大人にとっても日常の素朴な謎として残り続けています。
実は、この不一致の背景には、明治維新という日本史上最大の国家変革期における統治戦略や、都市の発展を巡るドラマが隠されています。さらにネット上で長年語り継がれてきた「戊辰戦争の賊軍に対する懲罰説」の真偽など、歴史の深層を紐解くと単なる丸暗記では見えてこない興味深い事実が次々と浮かび上がってきます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:不一致の総数は分類基準により「17〜19」に分かれ、純粋な県で16、北海道を含めて17、埼玉や東京の数え方で最大19となる。
- 要点2:最大の要因は明治政府の「旧藩の城下町意識の払拭」と「郡名の採用」であり、俗説の「賊軍懲罰説」は歴史学的に否定されている。
- 要点3:テスト対策では無味乾燥な暗記を避け、開港地・交通の要衝といった「都市の成り立ち」と語呂合わせを連動させることが攻略の鍵となる。
【全貌解明】県名と県庁所在地が違う県はいくつ?「17・18・19」のカラクリ
「都道府県名と県庁所在地が違う地域はいくつあるのか」という問いに対し、参考書やWebサイトによって「17」「18」「19」と表記が割れているケースが珍しくありません。この数字のブレは、北海道の扱い、埼玉県の表記ルール、そして東京都の定義の違いによって生じています。
まず、都道府県名と都市名が完全に異なっている地域を数えると、北海道(札幌市)を含めて17道県(純粋な県のみでは16県)存在します。東北の岩手県(盛岡市)や宮城県(仙台市)から、九州・沖縄エリアの沖縄県(那覇市)に至るまで、日本列島全体に広く点在しています。
この基本の17道県に加え、埼玉県(さいたま市)の扱いが最初の分岐点です。埼玉県とさいたま市は読みが同一(さいたま)ですが、漢字表記とひらがな表記の違いが存在します。これを「表記が異なるため不一致」と判定すると18道県になります。
さらに、東京都の都庁所在地を巡る議論が加わります。国土地理院や文部科学省の指導要領、大手地図帳の表記では長年「東京」と記載されるケースが一般的ですが、地方自治法上の所在地は「新宿区」です。「都名(東京)と所在地(新宿区)は異なる」とみなした場合、合計は最大値の19都道府県に達します。視覚データメディアの調査や教育現場の資料でも、出題基準によってこの3パターンが使い分けられています。
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【一覧表で比較】県名と県庁所在地が違う全19都道府県データ
学習教材や自治体資料をもとに、不一致が生じている全19都道府県の基本データとテストでの着眼点を整理しました。地方ごとの分布を見ると、東日本から中部・近畿・四国に集中しており、西日本へ進むほど県名と都市名が一致する傾向が見て取れます。
| 都道府県名 | 県庁所在地 | 不一致の種別・分類 | テスト対策・歴史的着眼点 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 札幌市 | 完全別名(道) | 開拓使の設置と計画都市としての発展。政令指定都市。 |
| 岩手県 | 盛岡市 | 完全別名 | 旧盛岡藩。県庁が置かれた「岩手郡」を採用。 |
| 宮城県 | 仙台市 | 完全別名 | 仙台藩の城下町。城下町名を避け「宮城郡」を採用。 |
| 茨城県 | 水戸市 | 完全別名 | 水戸藩の拠点。古代の「茨城郡」に由来する命名。 |
| 栃木県 | 宇都宮市 | 完全別名 | 旧栃木県と宇都宮県の統合合併。県庁が宇都宮へ移転。 |
| 群馬県 | 前橋市 | 完全別名 | 高崎と前橋の間で県庁移転論争が起きた歴史的背景。 |
| 埼玉県 | さいたま市 | 表記相違(漢字/かな) | 2001年の浦和・大宮・与野の3市合併で平仮名市名が誕生。 |
| 東京都 | 新宿区(東京) | 特別区・出題基準相違 | 1991年に有楽町から西新宿へ都庁移転。地図表記は「東京」。 |
| 神奈川県 | 横浜市 | 完全別名 | 開港場としての横浜村の発展と東海道宿場「神奈川」の名残。 |
| 石川県 | 金沢市 | 完全別名 | 加賀百万石の城下町。県庁所在地を美川(石川郡)へ一時移転。 |
| 山梨県 | 甲府市 | 完全別名 | 武田氏以来の城下町・甲府。古代以来の山梨郡を採用。 |
| 愛知県 | 名古屋市 | 完全別名 | 御三家筆頭の城下町。県庁の置かれた愛知郡から命名。 |
| 三重県 | 津市 | 完全別名 | 四日市(三重郡)に一時県庁が置かれ、津復帰後も県名が定着。 |
| 滋賀県 | 大津市 | 完全別名 | 大津県から滋賀郡大津への庁舎移転に伴い滋賀県へ改称。 |
| 兵庫県 | 神戸市 | 完全別名 | 歴史的港湾「兵庫津」の名を冠し、国際港として神戸が台頭。 |
| 島根県 | 松江市 | 完全別名 | 松江藩の城下町。城下町名を排して島根郡から命名。 |
| 香川県 | 高松市 | 完全別名 | 高松藩の城下町。香川郡高松に県庁を設置した経緯。 |
| 愛媛県 | 松山市 | 完全別名 | 古事記の「愛比売(えひめ)」に由来する風雅な命名。 |
| 沖縄県 | 那覇市 | 完全別名 | 琉球王国の首里から、商業と港湾の中枢である那覇へ。 |
【歴史の深層】なぜ不一致が生まれたのか?廃藩置県と明治政府の統治戦略
現在のような都道府県の枠組みが完成する端緒となったのは、1871年(明治4年)7月の「廃藩置県」です。当時の明治政府は藩を廃止して地方統治を中央集権化しましたが、発足当初は3府302県という膨大な数の行政区が乱立していました。その後、数次にわたる大規模な統廃合を経て、1888年(明治21年)に現在の47都道府県体制がほぼ確立します。
なぜ明治政府は「都市名=県名」という分かりやすい形に統一しなかったのか。当時の公文書や明治政府関係者の記録を精査すると、地域統合における3つの明確な力学が浮かび上がってきます。
1. 旧藩の権威失墜と「郡名」の積極的採用
明治政府が最も警戒したのは、江戸時代から続く封建的な領主意識や地域住民の藩への帰属意識でした。城下町の名をそのまま県名にすると、旧藩主の権威や「〇〇藩の領民」という意識が温存され、中央集権化の妨げになります。そこで政府は、城下町の名前をあえて退け、県庁が置かれた所在地周辺の歴史的な「郡名」を県名として採用する方針を採りました。愛知県愛知郡、宮城県宮城郡、石川県石川郡などがその典型例です。
2. 条約締結港と実質的港湾都市のねじれ
国際貿易港を擁する自治体では、幕末の外交史が地名のズレを生みました。神奈川県横浜市の不一致はその代表格です。幕府が日米修好通商条約で開港を約束したのは東海道の主要宿場町「神奈川湊」でした。しかし外国人居留地を交通量の多い街道から隔離したかった幕府は、対岸の寒村だった「横浜村」に勝手に開港場を建設しました。諸外国に対して条約上の整合性を保つため「神奈川」の看板を残しつつ、実態としての行政中枢を横浜に置いたことが、現在の不一致の直接的な要因です。
兵庫県神戸市も同様のプロセスを辿りました。幕府は古くからの要港「兵庫湊(大輪田泊)」を開港地として指定したため県名は兵庫県となりましたが、水深が深く大型船の停泊に適していた隣接地の神戸村周辺が開港場として爆発的な発展を遂げ、県庁所在地として定着しました。
3. 熾烈な庁舎誘致合戦と合併の妥協策
廃藩置県の再編プロセスでは、複数の県が合邦するたびに県庁の所在地を巡る激しい地域間対立が勃発しました。栃木県宇都宮市の場合、当初は日光街道の要衝である栃木町に県庁を置く「栃木県」と、大城下町である宇都宮町に県庁を置く「宇都宮県」の2つが存在していました。1873年に両者が合併した際、名称は「栃木県」を維持したものの、県全体の地理的中心で交通の利便性に勝る宇都宮へ1884年に県庁が移転されたことで、県名と所在地の不一致が恒久化しました。
岩手県盛岡市も激動の改名劇を経験しています。当初は盛岡県として発足しましたが、財政破綻や統治の混乱を経て盛岡城下を管轄する「岩手郡」に因んで岩手県へと改名されました。また三重県津市は、県庁が一時期四日市(三重郡)に移転して「三重県」と名付けられ、後に県庁が津に戻された後も県名が変更されずに残ったという、行政事務の変遷がもたらした産物です。

【神話解体】「戊辰戦争で朝敵・賊軍だったから改名された」は本当か?
ネット上の掲示板や歴史コラムなどで長年まことしやかに語られてきた言説に、「戊辰戦争の賊軍懲罰説」があります。「明治新政府に刃向かった旧幕府側の藩(賊軍)は城下町名を奪われて郡名に改名させられ、官軍側だった藩は都市名をそのまま県名にすることを許された」という説です。
しかし、近現代史の専門家による公文書検証が進んだ現在、この「賊軍懲罰説」は史実と矛盾する俗説として明確に否定されています。客観的な歴史データを照合すると、この説にはいくつもの致命的な反証が存在します。
- 官軍側でありながら不一致の県:鳥羽・伏見の戦いでいち早く新政府軍に味方し、維新の功臣とされた津藩藤堂家の本拠地は「三重県津市」です。御三家でありながら早い段階で新政府に従順だった尾張徳川家の地も「愛知県名古屋市」となっています。
- 朝敵・賊軍の筆頭格でありながら一致した県:戊辰戦争で最後まで新政府軍と激戦を繰り広げ、朝敵の烙印を押された旧会津藩や旧庄内藩の地域を含む福島県(福島市)や山形県(山形市)は、県名と都市名が完全に一致しています。
明治政府の太政官記録や内務省令を見ても、懲罰目的で地名を改名したという公的証拠は一切確認されていません。城下町名を外したのは、勝敗に関係なく「前時代の領主権力をリセットし、住民を近代国家の国民として再統合する」という統治技術の一環であったことが、近年の歴史学における定説となっています。
【実態検証】教育現場と受験生の本音|なぜ今も「理不尽」と感じられるのか?
歴史的な必然性があったとはいえ、現代の小学生や中学受験生、その保護者にとって、この不一致は依然として学習の大きな負担となっています。大手進学塾の社会科講師は、現場のリアルな実態を次のように明かします。
「小学4年生のカリキュラムで47都道府県を扱う際、必ず教室がざわつくのがこの不一致の単元です。『どうして全部同じ名前にしてくれなかったの?』『昔の政府の都合で僕たちが苦労するのはおかしい』という受験生の悲鳴は、毎年恒例の光景と言えます。単なる記号の暗記として詰め込もうとすると拒絶反応が起きやすく、定着率が極めて悪くなります」
SNSや教育系コミュニティでも、「神奈川=横浜」「愛知=名古屋」のような超有名都市は生活知識としてクリアできるものの、「岩手=盛岡」「島根=松江」「香川=高松」「愛媛=松山」といった地方中核都市の組み合わせで混同する声が頻出しています。特に四国の「高松」と「松山」は、「松」の字が共通しているために本番の入試で書き間違えるケアレスミスが後を絶ちません。

【中学受験・定期テスト対策】プロ講師直伝!絶対に忘れない語呂合わせと効率的暗記術
都道府県庁所在地のテスト対策において、最も非効率的なのは「表を上からひたすら声に出して丸暗記する」方法です。入試本番の極度の緊張感の中では、文脈のない丸暗記は一瞬で抜け落ちてしまいます。得点力を劇的に引き上げるための実践的なアプローチを紹介します。
1. 脳に焼き付く鉄板語呂合わせ集
覚えにくい組み合わせは、視覚的なイメージが浮かぶ語呂合わせを活用して短期記憶から長期記憶へ移行させるのが鉄則です。
- 「いわて(岩手)の森(盛岡)でおか(岡)っぱ頭」:盛岡の「岡」まで正確にイメージ化。
- 「愛(愛媛)を待つ(松山)、香る(香川)高い松(高松)」:混同しやすい四国の2都市を1つのストーリーで固定。
- 「津(津市)で三重(三重県)跳び」:日本一短い市名と県名をシンプルに直結。
- 「石(石川)の金(金沢)は重い」:加賀百万石の財力と石の硬さをイメージ。
- 「島(島根)の松(松江)へ行こう」:島根と松江の結びつきを一発で固定。
2. 【プロの結論】おすすめできる勉強法・避けるべき丸暗記の罠
教育心理学および中学受験指導の観点から導き出される、学習の判断基準は極めて明確です。
避けるべき学習法:白地図を使わず、テキストの文字列表だけを眺めて覚えるスタイルです。位置情報と結びついていない知識は、配点が高い「地図判読問題」や「地域別総合問題」で即座に破綻します。
強く推奨する学習法:「なぜその都市が県庁所在地になったのか」という地理的理由(港がある、平野の中心、鉄道の結節点)と地図上の位置をセットでインプットする方法です。「横浜や神戸は大きな港ができたから」「宇都宮は新幹線のルートにもなる交通の要所だったから」と背景を結びつけることで、暗記は知識のネットワークへと進化し、応用問題記述問題にも対応できる強固な学力へと昇華します。
【県名と県庁所在地が違う県】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:テストで「県名と県庁所在地が違う県は何個ありますか?」と問われたら何個と答えるべきですか?
A1:学校の教科書や一般的なテスト問題では、北海道(道)を除き、純粋に「県」だけを対象とする場合は「16県」となります。北海道を含めた「都道府県」として問われた場合は「17道県」が標準的な正解基準です。埼玉県(さいたま市)や東京都(新宿区)を数えるかどうかは問題文の注釈(「表記の違いを含む」「完全別名のみ」など)によって異なるため、問題文の条件指定を注意深く確認してください。
Q2:なぜ愛知県は「名古屋県」、神奈川県は「横浜県」にならなかったのですか?
A2:愛知県は県庁が設置された愛知郡から命名されました。当時の政府が尾張徳川家の旧権威を抑えるため城下町名を避けた経緯があります。神奈川県は、日米修好通商条約で規定された「神奈川」の看板を残しつつ、実質的な開港地である横浜村に県庁を構えた外交・歴史的背景によるものです。
Q3:東京都の都庁所在地は「東京」と「新宿区」のどちらを書くのが正解ですか?
A3:小学校の教科書や中学受験の模範解答では、長年の慣例および国の公式表記(都の代表都市)として「東京」と書かせるケースが大多数を占めます。ただし地方自治法上の所在地を問う高度な出題では「新宿区(または新宿)」が正解とされることもあります。学校の定期テストでは、事前に担当教員が指定した基準に従うのが最も安全です。
Q4:入試で最も出題ミス・失点が多い都道府県はどこですか?
A4:全国の教育現場で最も失点が多いのは、香川県(高松市)と愛媛県(松山市)の混同です。同じ四国地方で「松」の漢字が共通しているため、逆にしてしまう受験生が毎年続出します。前述の語呂合わせなどで確実に対策しておくことが合否を分けるポイントになります。
まとめ:歴史を知れば暗記は「知的な謎解き」に変わる
県名と県庁所在地の不一致は、単なる暗記の負担ではなく、激動の明治維新を生き抜いた先人たちの統治戦略や、開港に伴う都市のダイナミズムが刻み込まれた生きた歴史の痕跡です。
無機質な単語の羅列として詰め込むのではなく、「なぜ城下町の名を変えたのか」「なぜ港の近くに都が移ったのか」という背景に目を向けることで、地理学習は退屈な作業から知的な謎解きへと変化します。正しい歴史理解と効率的な暗記法を武器に、頻出の重要単元を確実な得点源へと変えていきましょう。 (出典: 県 名 と 県庁 所在地 が 違う 県(Yahoo!ニュース))